ユーラシア大陸の中央部を南北に縦断している山脈にウラル山脈とアルタイ山脈がある。ウラル山脈は古来、金を産出、それがウクライナを通じて南ヨーロッパに流れたが、アルタイ山脈もまた黄金の宝庫だった。いや、「アルタイ」という言葉は現地では「黄金」を意味していた。
この地域で活躍した民族はウラル・アルタイ語族といった。この言語に属する民族としては、世界最大の帝国を築いたモンゴル族やトルコ族などがいた。トルコ族はその後、西に移動し、アジア、アフリカ、ヨーロッパにまたがる大帝国オスマントルコを築いた。また、中国東北部(元満州)には清を建てた女真族がいた。
これらの民族では黄金に関する表現がよく似ている。モンゴル語では金のことを「アルタン」、または「アルトゥ」といい、トルコ語では「アルトゥン」という。女真族では「アルシン」または「アイシン」といっていた。つまり、ウラル・アルタイ語系では黄金の発音はほぼ一致していたのだ。
清朝の皇帝は「アイシンカクラ(愛新覚羅)」といった。ここでは黄金が家の名称に使われている。女真族はそれほどの黄金に深い関わりを持った民族だったのだ。
ちなみに、日本もウラル・アルタイ語族といわれている。その末裔が日本で「黄金の国ジパング」といわれるようになったのも、なにか因縁めいたものを感じさせる。