アラスカのゴールドラッシュを描いた映画で最高傑作といわれるのが、喜劇王といわれたチャップリンが監督、主演を演じた『黄金狂時代』だろう。1925年に製作された。喜劇調で、とにかく面白い。筋は次の通りだ。
「チャップリンが一獲千金を夢みて乗り込み、険しい山を越えて金のある土地を目指す。そこでは山小屋で餓死しそうになったり,酒場の女に失恋したりするが、最後は金鉱を発見,恋人と再会する」無声で白黒映画なので、黄金のコトブキ色は見ることはできない。だが、チャップリンが得意とするギャグ、パントマイムが随所に出てきて笑わせる。とにかく、黄金に狂った人々を風刺している。
大男の相棒が空腹のあまり幻覚に陥って、チャップリンを鶏と思い込んで追い回すシーン、古靴をおいしそうに礼儀正しく食べるシーン、フォークとパンによるダンス、吹雪で飛ばされそうになった崖上の小屋からの必死の脱出シーンなどが人口に膾炙している。同時に、アラスカのゴールドラッシュがいかに危険だったかをうかがわせる映画だ。
チャップリンの映画ではヒトラーを揶揄した『独裁者』、歯車に巻き込まれるシーンで大量生産を風刺した『モダン・タイムズ』など当時の世相を映した作品が多いが、『黄金狂時代』は最高傑作の1つとされている。