「有事の金」という言葉がある。有事とは戦争や、世界経済が危機に陥った時など、先行きが不安な時のことである。このような時には安全資産として金が買われるという意味です。そこから金は「ラストリゾート」、つまり「最後の拠り所」ともいわれています。
その金が日本を救ったことがあるという話がある。
1991年1月17日、米軍を主力とする多国籍軍がクウェートに侵攻、湾岸戦争が勃発しました。いわば「極めつけの有事」で、金は暴騰すると思われていました。この時、時差の関係により、世界で最も早く金の先物取引が始まったのが日本の東京金取引所(現東京商品取引所)でした。
予想通り、金価格は上昇で始まった。ところが、取引開始後30分で下落に転じたのです。多国籍軍は十分な準備を整えており、「長期戦」つまり「有事」にはならないとの見方が支配的になったからです。そして、金の下落はチューリヒ、ロンドン、ニューヨークに引き継がれました。
もし、東京で金の先物取引が行われていなかったならばどうなっていただろうか。日本の石油会社などはあわてて原油を高値で買い込んで大損したかもしれない。
先物取引が現物価格に影響を与えることから日本の大蔵省(=財務省の前身)は「シッポが頭を振り回す」と言ったことがありました。