試金石を使った金の純度判別法は古代に発見されましたが、中世ヨーロッパでも行われていました。
当時、金貨は種類が多く、純度がはっきりしていませんでした。
その純度の判定を民間に頼っていた国がありました。それがイギリスです。
イギリスでは金細工師が王立造幣局の発行する金貨を、試金石を使って「純度の判別」を行っていました。
「12人の金細工師と12人のロンドン市民が審査団を結成、
王立造幣局が発行したばかりの硬貨を公開で判別する」という手法です。
いかにも“商人の国イギリス”らしい。純度の判別を民間に頼る手法は700年以上行われ、
1982年に検査を行ったときはエリザベス女王が出席しました。
もともと、英国は民間の力が強い。それにしても「国の金貨の純度を民間が判別した」というのは驚きです。
金貨は国力が衰えると純度を落とすことが多く、
判別を商人に頼ることは商人がいかに高い信用を保持していたかを表しています。
もっとも、純度の判別はいつも正しかったわけではありません。
イギリスでは金貨の品質が下がったため、金細工師が不正を働いたと判断。
1124年、ヘンリー1世は親方約200人を招集し、その半分の右手を切り落とさせています。
江戸時代、新井白石も鋳造をごまかした金座の商人を遠島に処しています。
金貨のごまかしは洋の東西を問わないようですね。