中世、金不足に悩んだヨーロッパに神風(?)が吹きました。それが14世紀、ヨーロッパに吹き荒れた黒死病(ペスト)です。この時、2,000万人以上、全人口の約3分の1が亡くなったといいます。
皮肉なことに、これによって豊かな人が急増した。遺言状を書く暇もなく一家が全滅した例が無数に出ましたが、亡くなった人の財産を手に入れた人も多かったのです。
特に金銀を多く手に入れたのが、教会でした。一村が全滅したら当然、その財産のうち教会に分配される量が多かったです。すると教会には黄金が山積みとなったのでした。カトリックのトップ、教皇は特にすさまじく、こんな話も残っています。
「教皇の馬でさえ金の衣を着て金の器で餌を食べ、神が奴隷の贅沢を許さなければ、間もなく金の蹄鉄も打たれただろう」
このころ、教皇庁はローマからフランスのアヴィニヨンに移され、7代にわたって続きました。「これはフランスの金を手に入れるためだった」との説もあります。
ヨーロッパは黒死病で大きく変わりました。農民一人当たりの土地は増え、明日のわが身もわからない人々は贅沢に走り、商業が広まりました。結果として、黒死病が新しい時代を切り開いたのです。
それとともに金貨への欲求が強まり、都市には富がどんどん蓄積されました。この富とは、金銀のことだったのです。