インド南部の町、ベイソール。ここでは毎年10月8日、「ダントラー」という祭が行われている。この祭、金が主役を務めているところから別名「金の祭」とも言われている。祭の最大の行事は「神が悪魔を滅ぼす」ことを主題としたパレード。なんと、約4時間も行われる。この時、金で飾った神の御輿が練り歩くが、この御輿は100キログラムの金を飾りとして使っている。
祭りの当日、この地方を支配していたマハラジャ(=インドの藩王)の宮殿を見学することができる。この宮殿もまた金づくし。1897年に建設された謁見の間はすべて金箔で覆われ、まばゆいばかりの輝きを見せている。中に置かれた装飾品も金ずくし。マハラジャが座る椅子には480キログラムの金が使われている。盗み出そうとしても、これほど重いといかな泥棒でも運び出すことはできないに違いない。もっとも切り取れば可能だろうが、宮殿の中に忍び込む必要がある。
なぜこんなにも金を使うのだろうか。それは「金でつくったものはすべての始まりであり、金は永遠の命を保ち、永遠の象徴である」からだそうだ。いわば古来の言い伝えが、そのまま金の飾りになったに違いない。だが、残念ながらまだ永遠の命を得た人もマハラジャも存在していない。