クシナーラ(現在のカシア)と聞いただけで、場所がわかるとすれば、よほど敬虔な仏教徒に違いない。というのも、クシナーラはお釈迦様が入滅(=亡くなる)した地だからだ。このクシナーラの地に、1927年、ミャンマーの仏教徒が涅槃(=亡くなること)堂を建立、その中に、5世紀に製作された金の涅槃像(=亡くなった時の横になった像)を安置した。
この涅槃像は長さ、6メートル。1876年にミャンマー人によって発見され、発見したミャンマー人が金箔を張り付けた。ただ、その後、時間がたつとともにキラキラした輝きは薄れている。ミャンマーはどこでも金のパゴタ、金の仏像があるが、それがインドにまで及んできた格好だ。
この堂のそばにはヒランナバーティという川が流れている。これは「黄金を産する」を意味している。昔、この当たりは金の産地だったようだ。その意味では金の仏像はあまり違和感がないのかもしれない。
ただ、「諸行無常」を説いたお釈迦様は金にはあまり関心がなかった。もともと、お釈迦様は王族の出身。金が大切なら、何も出家などしなかったに違いない。
だが、お釈迦様が説いた仏教では東南アジアも中国も日本も、お寺も仏像も金で輝いている。不思議な話だ。