普仏戦争に勝つて、賠償金として多額の金を得たドイツだったが、因果は巡るという。第一次世界大戦ではドイツは強烈なしっぺ返しを受けた。フランス、イギリス、アメリカなどの連合軍に敗れ2,260億マルクという、天文学的な賠償金を払わされる降伏文書に署名させられたのだ。「これは金に換算8万1,000トン」(『金が語る二〇世紀』)にのぼったという。おそらく、当時の世界の金の在庫量を上回ったに違いない。こんな額をドイツが払えるわけがないのに……。
この時、虎と言われたフランスの首相クレマンソーは「賠償金は3,000億マルクにせよ」と主張した。それより少ないとはいえ、べらぼうな額であることに変わりはない。ドイツは最初は払ったが、すぐ払えなくなった。そのうえ、不況で失業者が増え、ナチスが政権を奪取し、第二次世界大戦を引き起こした。それに懲りて、第二次世界大戦後、連合国はドイツに賠償金を請求しなかった。以降、世界で敗戦国に賠償金を請求するようなことはなくなった。
ちなみに、この時、クレマンソーは「石油の一滴は血の一滴」という名言を吐いている。既に時代は石炭から石油に替わっていた。そして、それは第二次世界大戦でハッキリ証明された。