ジョージ・ソロスという男がいる。株や為替、先物取引の世界では「大相場師」として知らないものがない存在だ。1993年春、それを実証する動きがあった。金の相場がにわかに動き出し、1トロイオンス330ドルくらいだった価格があっという間に400ドルを突破した。このきっかけをつくったのがソロスだった。
この時、彼は金を買ったわけではない。ニューモント鉱山という全米一の金鉱山会社の株を買った。この時、ソロスにニューモント鉱山の株を売ったのがジェームス・ゴールドスミスという男だった。ゴールドスミスはソロスに売って得たお金で金(きん)を買った。その結果、金価格が急上昇し、金鉱山株も上がり、ソロスは大儲けした。
その後、ソロスも、金価格の急騰を見て、金を買ったといわれる。いわば、2人の相場師が二人三脚で金相場を押し上げたともいえようか。そこで、英国の経済紙ファイナンシャルタイムズはこの時の状況から「ソロス氏が口を開けば、みんなが耳をそばだてる」とまで書いている。
ただ、「ソロスが買った」という噂が出てしばらくすると金相場は下がることが多い。もしかしたら、意識的に「ソロスが買った」という噂を流し、金が上がったところで、売り抜けているのかもしれない。いや、それに違いない。「ソロス氏の噂が出たらもう天井」と心得ておいた方がよいのではないだろうか。