中国では南北朝時代という時代があります。唐が滅びた後に南と北に分かれて争っていた時代で、「5胡16国の時代」ともいいます。この時代に活躍した大学者に葛洪という男がいます。彼は数百巻の本を書きましたが、その中に『抱朴子』という本があります。これは「不老不死や神仙になる方法などを書いた」といわれていますが、その中に『金丹篇』というものがあり、このような記述があります。
「黄金は火の中で何度鍛えても消えることがない。土の中でも腐ることはない。不朽性があるので、人を不老不死にすることができる」
不老不死と金の不朽性が結び付き、それが「錬金術」にもなりました。これを「金丹道」といった。ただ、どのような金でもよいわけではありません。普通の金は「生金」といって毒があり、錬金術で造られる金は「薬金」といって、それを飲めば不老不死になるとされていました。
『抱朴子』では『内篇』で卑金属から金銀など貴金属を造る方法も説かれています。
不老不死の霊薬は水銀から造られるとされていましたが、金を溶かした「金液」を飲めば同じような効果があるともされていました。金は硫酸と硝酸を混ぜた王水や青酸にしか溶けませんが、ここでは水銀、青酸などが使われています。
青酸は猛毒であるものの、この時代には早くも金を溶かすことを知っていたということで、かなり技術が発達していたことがわかります。ただ、こんな金液を飲めば間違いなく命を落としたことでしょう