更紗という木綿に模様が染められた織物がある。世界中で織られ、日本でも作られた。中世から近世にかけインドのムガル帝国下で多く織られ、その精緻な技巧により世界で高い評価を受けた。インドでは「ピチャヴァイ」とよばれている。ピチャヴァイは精緻な技法だけではなく、金箔・銀箔などを貼り付けた豪華なものがある。とにかく金がかかった織物だ。もちろん一般の人は着ることはできないだろうが、王侯貴族はこれを愛した。
日本でも18世紀におられた「紺地クリシュナ・ゴビ金更紗」というものがあり、広島県立美術館に収納されている。
この更紗について、2020年2月1日の日本経済新聞ではこう記している。
「粘着力のあるノリで模様を手描きしたり、型で押したりした後に、金箔や銀箔、雲母を巻いて作っている。箔押しはインド古来の技法ではなく、ムガル帝国の時代にペルシャからもたらされた。手間がかかるため、複座圧な刺繍と同様に高く評価された」ということはペルシャ、つまり現在のイラン地方にも同じような更紗が多数存在したに違いない。金箔を医師や金属など固い物質に貼り付けることや金糸を織り込むことは世界で広く行われている。だが、しわがつく織物に貼り付けた場合どれほど長持ちするのだろうか。