金取引をしている人でロスチャイルドの名を知らない人はいないではないだろうか。金の現物相場は長い間ロンドンが世界に指標になっていたが、その値決めはロンドンのシティにあるロスチャイルドのオフィスの2階で決められていた。この部屋はごく粗末で、金の装飾などはない。だが、金の価格を決めていたところから「黄金の間」と言われていた。ところが、ロスチャイルドは2004年4月、金の取引から撤退。黄金の間での値決めが行われなくなった。
ロンドンで金の値決めが始まったのは第一次世界大戦後の1919年。世界各国が金本位制に復帰した時、英国政府の要請によるものだった。以来、ロスチャイルドを中心として大手貴金属商5社が毎朝、黄金の間に集まって価格を決めていた。だが、金の値動きが大きいこともあって、やがて午前午後の2回行われるようになった。当時、ロンドンは世界の金融の中心だったので、ここで決まった金価格が、世界の金価格を左右していた。
5社の中身はよく代わったが、ロスチャイルドだけは不動。というのも、金相場を事実上牛耳っていたのはロスチャイルドだったからだ。そのロスチャイルドが金取引から手を引いたことで、金の世界におけるロンドンのウエートは大きく低下した。今ではニューヨークの金先物相場が世界の基準になっている。日本でも先物取引が行われているが、ニューヨークの相場の写真相場ともいわれている。