17世紀後半、「錬金術に終止符を打った」ともいわれた学者が現れた。それが、ロバート・ボイル(1627~91年)である。彼は『懐疑的な科学者』という本を書いた。副題は『一般的な錬金術師が、塩、硫黄、水銀をすべての者の原質証明することに努力してきた実験に対する化学的、技術的な逆説』。いわば、錬金術を打破したものだ。ボルトの説について『錬金術』ではこう書いている。
「懐疑的な化学者カルネアデスと、アリストテレス派の哲学者とパラケルス派の錬金術師と、いずれの派にも組しない人々との議論が述べられた。ボイルを代弁しているカルネアデスによれば、すべての物体は究極のところ、数種類の運動粒子になってしまう。すなわち、原子論である」
アリストテレスは古代ギリシャの時代に錬金術を提唱、パラケルススは有名な錬金術師。それをすべて間違いとしたのだ。ボイルは物質の種は元素の差、したがって粒子の集合状態の差によって生まれるとした。しかも、実験を行い、それを理論化している。もっとも、これで錬金術師がすべていなくなったわけではない。その後も錬金術は細々と行われている。現在まで。金の魅力はそれほどに大きいのだ。ちなみに、元素を融合して金の元素を造れば、金は組成できる。しかし、莫大なエネルギーを有するので、現在は実現していない。