日本最古の歴史書は「古事記」というが、養老4年(720年)、舎人親王によって最初の正式な歴史書「日本書紀」が編纂された。ここでは以下のような記述がある。
「天照大神の孫が高天原から日向国(=今の宮崎県)の高千穂の峰に降りてきて(=天孫降臨)、その子孫である神武天皇が東征、奈良に向かった。神武天皇は当初、大阪の方から奈良に入ろうとしたが失敗。紀州半島に上陸し、八本の足を持った八咫烏(やわたのからす)によって先導され、奈良を目指した。しかし、ナガスネヒコという土蜘蛛(=朝廷に刃向かった土豪)が行方をはばみ、神武天皇は戦っても、戦っても勝つことができなかった。
ところが、この時、金色の鵄(とび)が神武天皇が持っていた弓の先に止まって金色の光を放し、それに目がくらんで土蜘蛛が敗走、神武天皇は無事、奈良に入ることができた」
建国神話では、神武天皇が建国したのは約2700年前だが、このころ日本はまだ石器を使っていた縄文式土器の時代で、日本を統一した王などは出ていない。金属の武器もなかったといわれている。
そこで、「神武天皇は架空の人物」との見方が多く、東征も本当にあったかどうかは不明だ。だが、現在の皇室の発祥の地は奈良ではなく、他からきたこと、それに金がなにかかかわったことをこの神話は伝えているのではないか。古代中国では「三本足の金鳥」と言う伝承がある。これが影響を与え「金鵄」が生まれたのかもしれない。もちろん鳶は金色などしていない。