フランス国民はヨーロッパで最も「金好きな国民」といわれている。というのはフランス人は古来、国をまったく信用していなかった。それで、個人は有事に備え、金を保有したというわけ。
いまでは、「国家の保有する金よりはるかに多い金を保有している」と思われている。革命、戦争が多く、パリがしょっちゅう、攻防の場になったことも、金を保有させた大きな動機になったのだろう。
金は女房族の「へそくり」としても、保有された。では、どこに金を隠したのだろうか。額縁の裏、壺の中? いやいや、靴下の中だった。亭主がタンスの中の女房の靴下など覗くことなど、まずない。そこで「妻が靴下を編んでいる」ということは「へそくりをしている」という意味に使われた。
また、「娘が生まれると毎年金貨を一枚ずつ蓄える」という習慣もあった。娘が結婚した後、離婚や亭主との死に別れなど「いざ鎌倉」に備えたものだ。そういえば、インドでも娘の結婚時には金を持たせる。インドでは女性は土地を所有できなかったからだ。
日本も持参金を持たせるが、それは紙幣。「金を持たせる」親はまず今いない。日本は島国だけに、「金を持って海外に逃げる」ことはできない。土地に命を懸ける「一所懸命」の国だからだ。