第一次世界大戦で中止された金本位制を英国が再開、日本も追随したことがありました。何しろ、当時の世界は英国が「世界標準」だったからです。日本は昭和4年(1929年)に始まった世界恐慌のまっただ中にもかかわらず、時の宰相犬養毅が第一次大戦前の金価格で金本位制への復帰を決め、金の輸出を解禁してしまいました。
この結果、日本も激しいデフレに襲われました。イギリスと全く同じ失敗をしたのです。しかも、当時の日本は世界恐慌で輸出が振るわず、慢性的な貿易赤字に陥っていました。そこであっというまに金が海外に流出してしまいました。
輸出は一年間で31.5%減り、貿易赤字は7622万円にまで増加。金解禁時に10億7300万円あった、金を含む正貨準備は1931年12月には5億円を割り込みそうなところまで減少してしまいました。
慌てた政府は、翌6年に金の輸出を再禁止しましたが後の祭り。金流失で通貨の流通量が減り、国内はかつてない大不況に追い込まれました。
失業者はさらに増加。娘の身売りが相次ぎ、陸軍の青年将校による犬養首相の殺害、いわゆる5.15事件が起こりました。これを機に日本は大陸進出、太平洋戦争への道を歩み始めた。政策ミスは時に取り返しがつかないこともあるのです。