金の世界にはゴールド・パニックという言葉がある。パニックというので、「金価格が暴落した」ような印象を受ける言葉だが、実はまったく逆。「金価格が暴騰、史上最高値をつけた」時のことを指している。
1980年1月、金価格が急上昇したことがあった。同月21日には1トロイオンス850ドルに達した。この暴騰を、米国の週刊誌ニューズウイークが「ゴールド・パニック」と呼んだのだ。
暴騰のきっかけは79年のイランのイスラム革命。これによって石油の供給不安が起こり、石油価格が急騰、その余波で金価格も上がった。さらに、米国の物価が2ケタ上昇、インフレが起こり、金利を上回り、実質金利がマイナスになったことから「ドルから金への乗り換え」が起こった。
その後、米国の金利が上がるとともに金価格は急降下したが、21世紀に入り、金価格は上昇。今では1900ドル以上になっている。もっとも、徐々に上がったので「ゴールド・パニック」とは言われていない。
相場の世界ではよく「石油が上がると金は上がる」と言われているが、2020年は石油価格が下がり、21年は石油が上がったが、金は上がっていない。しかし、2022年に入りロシアのウクライナ侵攻で両方とも上がった。金価格は方程式通りにはならないのだ。