株式市場には「黄金株」というのがある。といっても、金鉱会社の株でもなければ、価格がべらぼうに高い株でもない。「株主総会などで決定された事項に拒否権をもつ株」のことだ。通常、株式会社では持ち分に応じて決定権がある。そこで、過半数の株を持てば、会社の人事から各種の施策まで、すべて決定することができる。ところが、それに待ったをかけられる株を黄金株という。
女王陛下の政府、すなわちイギリス政府でも黄金株を持っている。この株はわずか1株。イギリス政府は国営企業を民営化した時、1株だけは政府が持つことにしており、それが拒否権を持つ黄金株というわけ。もっとも、イギリス政府がそれを利用したというような話は聞こえてこない。
 もちろん、1株は1株。売却すれば、それ以上の価値があるわけではなく、それ以下の価値しかないわけでもない。
かつて、日本政府はNTTの株を大量に保有して、少し株価が上がると売却して利益を得ようとした。NTT株は一時、大幅値下がりで投資家に大損をさせたが、NTT株を放出した政府には巨額の利益をもたらした。
この株、拒否権を持っているわけではないが、国に多額の現金をもたらした。その意味ではNTT株こそ日本政府にとって「黄金株」だったのかもしれない。