「洗面器を使って川の砂を分離して金を採取する」ーまだ、開発途上国などではほそぼそと行われ、貧しい人々の生活の糧になっている。だが、こんな牧歌的な時代は先進国ではもうとっくに昔話となった。いまでは金の大部分は巨大な資本を使って地下深く掘り進み、採掘されていることが多い。
ところが、大規模になればなるほど、その資金の調達は大変。そこで、頭の良い人が20世紀後半、「金(きん)を使って資金を集め、金を採取する」手法を考えた。これを「ゴールドローン」という。
仕組みはごく簡単。「鉱山会社が、銀行などが保有している金(きん)を借り、それを市中で売って資金を作り、その資金で設備投資をして金を発掘する」というもの。借りた金(きん)は採掘した金(きん)で返却する。金は利息が付かない。それを貸し出せば金利が入り、銀行にもメリットが大きい。
この方法は1980年代の後半、一時、爆発的に流行したが、90年代に入ると下火になった。当時は金の価格が低迷し、借りてもなかなか採算に乗らないうえ、これで金を採掘すると、その分、金の価格を抑える可能性があったからだ。
それにしても「金(かね)は金(かね)を生む」とはよくいわれるが「金(きん)が金(きん)を生む」時代になったようだ。